第7章 WHITE CLOVER
『入院って!それも胃潰瘍?!』
大学病院の特別室に響き渡る声。
広々とした室内に、豪華絢爛な大きなベッドに寝ている患者。
「お前のせいだ」
責任取って毎日顔出せと暴君のごとく、言ってのけるのは我が社 社長 クロコダイル。
『今月凄く忙しいのはご存知ですよね!?』
毎日来いとの命令には簡単には頷けない。
『社長の穴も私が埋めなきゃいけないのに行く暇なんて無いです!』
「お前以外に部屋の鍵を預けるつもりはない」
『ここは100%完全看護です。
その上、身の回りの用意は専属が付くと聞きました』
1日の部屋代はバカにならないだろうな・・
怒りながらもそんな事を考えてしまう庶民には到底使えない部屋。
「ここで仕事する」
『ダメです!
どうせ入院するなら徹底的に全て治して来て下さい』
「あの〜・・・」
『あっ!済みません。
連絡が着て驚いてしまい慌てて来たのに当の本人が豪華なベッドで優雅に葉巻なんて吸ってるもので我を忘れてしまいました』
深ぶか頭を下げる先には、社長の主治医で大学病院医院長の初老の男性と看護婦2名。
「チッ、泣きながら来りゃいいのに」
誰が泣くか!と、睨み見ればこれまた優雅に新聞を見ている姿にまた、沸々と怒りが込み上げた。
今日、日曜の真っ昼間。
久しぶりに買い物をと街に出掛け、一目惚れした服を購入しようとした矢先に掛かってきた電話。
社長が入院したと病院からの電話。
詳しい事は来院されてくださいとの事で慌てて駆けつけたのだ。
タクシーで向かう道中、もしもの事が頭を駆け巡り その時は私がしっかり社長を支えなきゃと決意して溢れ出る涙を必死に止めた。
のに、社長は見るからに元気そうで葉巻なんか吸ってるし、よく聞けば胃潰瘍で1週間の入院。
潰瘍は薬のみで手術はなし。
社長本人も治療法には納得済みで、入院の運びになったのに直接電話はせず看護師任せ。
おそらく、私に病状等伏せる様に手回ししたのだろう。
分かっていたらあの服買ってから来たのに・・
もう売れてちゃったよね と、諦めきれない後悔が広がる。