第30章 SWEET PEA
【オマケ】
「あれ?仲直りしましたか?」
会った途端のキッドの言葉。
いつもなら余計な世話だと一喝するが、今の俺は気分が良かった。
「オーナー、機嫌がいいすね?」
「いつものを頼む」
短い返事と共に、手早くカクテルを作り上げるキッド。
ここに来たのはあの日以来だ。
「はい、お待たせしました。
で、努力の成果は出ましたか?」
「・・今日引っ越しが終わった」
の部屋を出たその足でBARを訪れた。
「あぁ、だからか!」
何だ?と視線を向ければキッドはニヤニヤ笑っている。
「オーナー寂しいでしょ?
がいねぇ部屋に帰りたくねぇんだ」
「・・・」
一眼睨みつければ、キッドはすぐさま口をつぐむ。
余計な事を言って欲しくはねぇ。
「・・オーナーはさ、いいんすか?
がそばを離れても」
「・・何を言ってるのかわかんねぇな」
「いや!だってどう見ても
「キッド」
ハッとするキッドの表情を見ながら俺はグラスを一気に空にした。
「ごちそうさん」
そう言って札をキッドに渡す。
「ありがとうございました」
一礼するキッドに見送られながら俺は家には帰らなかった。
キッドの言う通り、誰もいない部屋に帰る気はなかったのだ。