第20章 SHEPHERD’S PURSE
「おーっ!早かったなハンコック」
「ルフィ、そなたに会いたかった。
これお土産じゃ、是非使ってくれ」
ルフィがソファに座るやいなや、寄り添うハンコック。
その手には、出張で海外に行った際買い求めたというネクタイピン。
早速包みを開けたルフィの手からピンを奪い、付けてあげていた。
それを横目で見ながらキョロキョロ辺りを見渡す。
いつもならルフィと一緒に現れるゾロ。
その姿が一向に見えない。
「久しぶり」
『うん、久しぶりだね』
「ゾロだろ?もう少ししたら来ると思うからさ、飲んで待ってようぜッ」
グラスを上げたルフィとハンコックに促され乾杯して口を付ける。
遅いなと感じつつもハンコックの思い出話に耳を傾ける。
「悪い、遅くなった」
『ううん、忙しかった?』
「・・まぁな、今日来るって言ってたか?」
『あっ、言い忘れちゃってたの』
ごめんと謝りながら私は違和感を覚えた。
私が店に来るかどうか今までゾロは聞いた事がない。
指名を今日初めて入れたせいかな?とは、思いながらも若干余所余所しい態度に違和感だけが残る。
『・・どうかした?』
「いや・・・」
座ってる距離感もそうだ。
ハンコック達みたいにベッタリとまでは言わないが、この少し隙間が空いた空間。
付き合う前とそんなに変わらないとは思うが、病院での距離感と大分違う。
てか、病院だけってのが悲しいが・・・
「・・・そんな顔するな」
そう言って耳元に口を寄せるゾロ。
「自分の女が他の男の目に触れるのが嫌なだけだ」
『!!ーーーっっ、ゾロッ』
触れそうな程近付いた耳元に暖かな吐息と言葉。
それだけで自分の顔が紅くなるのがわかる。
「くくくっ、タコみてぇ。
お前、顔に出過ぎだぜッ」
口角を上げて笑うゾロ。
何とか平常心を取り戻そうと試みるがまた、ゾロの方が一枚上手だった。
「今日俺ん家来るか?」
『・・・えっ?』
「考えとけ、また後で聞くからな」
それって・・
それってそれだよね・・・?
『ーーーッッ!!?』
私の顔を満足気に見たゾロは、他の客帰して来るから待ってろと行ってしまう。
私は、期待と不安な心をどうにか落ち着かせようとするのに精一杯だった。