【うたプリ】歌い手Minori、トリップします……?
第4章 皆との1週間
僕が庭で歌っていると、蘭丸が来た。
歌ってすっきりしたのか、少しだけ話す気に慣れた僕は、蘭丸に聞いてもらうことにした。
貴「昨日倒れた原因はね、記憶が戻ってきたからなんだ」
黒「記憶?どういうことだよ」
貴「僕ね、記憶喪失なんだ」
黒「き、記憶喪失だぁ!?」
貴「そう」
自分が記憶喪失だということを伝えると、蘭丸は驚いた。
まあ、それが普通の反応だよね。
シャイニーさんや林ちゃん、龍也さんもこのことは知ってる。
林ちゃんや龍也さんは驚いたが、シャイニーさんだけは「そんなの関係ありましぇーーーん!!!」って言った。
あの言葉には驚いたけど、シャイニーさんの言う通り、音楽をやっていく上では全然関係のないことだ。
黒「で?」
貴「え……?」
黒「そんなことで悩んでたのか、てめぇ」
貴「!」
この蘭丸の言葉には、心底驚いた。
一生懸命悩んでいたのが全て否定されたようで、少し怖かった。
貴「だ、だって…………、今まで知らなかったっていうか、覚えていなかった記憶が蘇ってきて、何が何だかわからなくなって、それで………」
黒「確かに混乱はするだろう。だがな、お前はお前だ」
貴「っ!!」
“お前はお前”。
それって、どんなことがあろうと“僕は僕”ってこと……?
黒「俺が、俺たちが知るお前は、最近できたばっかの生意気な後輩で、だが人一倍音楽に真剣で、信頼できる奴だ」
貴「蘭、丸………」
黒「それが、“美音姫香”だ」
貴「っ…………」
この言葉に僕は、涙腺が崩壊されてしまった。
無意識に欲しがっていた言葉を、蘭丸は言ってくれたんだ。
泣かないように堪えていたのに、泣いてしまった。
黒「お、おい!泣くなよ!!」
貴「む、無理………、だよ………(泣」
黒「チッ………。仕方ねぇな」
ギュッ
貴「ら、蘭丸……?」
黒「なんも見てねぇから、俺は」
蘭丸は、僕の泣き顔を誰にも見えないようにするためか、抱きしめてくれた。
嬉しいと同時に、申し訳なさがあった。
こんなところを誰かに見られてしまったら、蘭丸に迷惑をかけてしまう。
アイドルにスキャンダルは厳禁だ。
それでも、この時の僕は何も言えず黙って蘭丸の腕の中で泣いていた。