第1章 最近の江戸城は…
上様はそのまま、何処かへ歩いていかれました。
その後ろ姿をお見送りし、いただいたばかりの包みを開けると…真っ白な玉が出てきました。
「飴…?」
見たこともない飴玉に、若干恐怖を覚えてしまう私は、やはり壁を蹴り飛ばした罪で、江戸城を追われるべきでしょうか…
真っ白な飴玉をゆっくりと口の中に入れると…
「わあ…」
味わった事のない、甘くて優しい…それでいて懐かしい…不思議な不思議な味が致しました。
ぽろぽろと、無意識に出てきた涙に我に返ると、目の前には稲葉様がいらっしゃいました。
「何処か悪いのですか?」
廊下の隅で座り込んで涙を流していた私に、驚かれたようで、気遣ってくださいました。
「い、いえっ」
さっと、立ち上がった時、
はらり
と、上様からいただいた鮮やかな斑模様の包み紙が落ちてしまいました。
急いで拾おうと屈むと…
「上様からですね。とても甘くて不思議な味がしたでしょう?」
はい、と答えた私に、稲葉様は上様に負けないくらいの笑顔を向けてくださりました。
最近の江戸城は何かがおかしいのです。
鷹司様もご機嫌が良いのです。
それは少しだけ…甘くて不思議な…上様のおかげなのですね。
鷹司様が幸せになりますように。
女中として、これからも一生懸命お仕え致しますね。
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大好きなゆきコロさんの「お江戸ライフ満喫中につき電話に出ることは出来ません」番外編より…
勝手に二次創作させていただきました。
ゆきコロちゃん、お誕生日おめでとう。
これからもお江戸、応援してます♡