第12章 エゴイストの罰。(赤葦京治)
木兎光太郎とバレー部マネージャーであるが付き合いだしたのは2ヶ月前の事。
にとっては初めての彼氏。
そんな彼女を気遣ってか、高校生にしてはとても『清い』付き合いをしていた。
木兎にしては珍しいとも言われていた。
容姿も性格も悪くない。
寧ろモテる部類に入る。
木兎と付き合うまで誰とも付き合わなかったのには理由がある。
「言われた通り…来たよ、いないの…赤葦くん…?」
部活も終わり、生徒達も皆下校した後。
最終下校時刻まで後一時間。
真っ暗な部室塔の2階奥にあるバレー部の部室へと彼女は一人足を踏み入れた。
小さな口から紡がれた名前は木兎の名前ではなくーーー、赤葦。
「赤葦、くん……?…っ、あっ…!!」
見回りの先生にバレてしまうので明かりはつけない。
目が慣れるまでゆっくりと動かなければならない。
慎重に1歩踏み出した矢先、背後から腕を引かれて思わずは声を上げた。
「し……、俺」
「ん……!」
大きな手で口を塞がれる。
鼻を掠めるのは爽やかなムスク。
知っている香り。
「あ、かあし…くん、」
「偉い、ちゃんと来たんだ」
「今日は…あの、何…?」
『今日は』、それはこうして呼び出される事が初めてではないと言う事を示していた。
に対してとんでもなく執着を見せる赤葦は何かある度にこうしてここへ彼女を呼び出している。
そして罰ゲームと言い、赤葦は彼女に触れる。
誰かにが告白された時、
誰かがの髪に触れた時、
木兎と付き合いだした時。
甘い言葉と快楽の裏にあるじわりと広がる恐怖が、彼女をここへと向かわせる。
絶対的な支配。
「俺さ、昨日の見たんだよね」
「昨日……?」
昨日は確か。
は思考を巡らせ昨日の事を思い出す。
昨日は部活が休みで、木兎と学校帰りにカフェへ寄ってその後家へと送り届けてもらった。
「……っ、」
「思い当たる事、あった?」
「………」
の頭に浮かんだ事はたった一つ。
帰り道に木兎が自分の手を握った事。