第7章 その歯車に触れたのは彼女の左手。(牛島若利)
「嫌じゃ…ない、ただ…信じられなくて……っ、牛島くんが…本当に此処にいるのかさえも…わからなくなりそう、なの…」
「…?」
牛島はの手を取って自分の頬に触れさせた。
大きな手に包まれた小さな手。
そこから伝える、これは現実なのだと。
「此処にいるのは、俺だ」
支配の様にも、誇示の様にも聞こえるその言葉。
でもにはまるで自分を安心させてくれている様に聞こえた。
は牛島のジャージを掴み顔を寄せた。
「?」
「……牛島くん、私も…貴方に触れたい」
「!………そうか」
ジャージを脱ぎ捨てる。
その下のTシャツを脱ぐと鍛え上げられた上半身がの目の前に現れる。
その両腕が伸びてきて前を肌蹴させていたのブラウスをするりと落とした。
「………」
まただ。
こうしてが自分のものになる決意を固めたと言うのに、自分の欲は強くなるばかりだ。
腕を引いて抱き締めて唇を寄せる。
もそれに応える様に目を閉じた。
愛しいと、思った。
(これが、欲しいと思う理由か)
何故が欲しいと思ったのか、それは愛しいと思ったから。
お互いの唇を求め合いながらベッドへと倒れ込む。
清潔感のあるピンクベージュのベッドカバーが二人を受け止めて乱れ揺れる。
キスの嵐が止み、が目を開けると見慣れた天井とこの部屋にはミスマッチな牛島の顔。
は吸い寄せられる様に左手を伸ばしその顔に触れる。
愛しいと、思う。
それを我慢しなくていいと言われてしまえば、歯止めが効かなくなってしまいそうで。
そんなはしたない自分は嫌なのに。
(…欲しくて、堪らない)
同じ事を考えていたなんてどちらも思ってもいなかった。
互いに最後の一枚まで床に脱ぎ捨てた後、牛島が覆い被さる様に体を重ねる。