第5章 唇にハニー。(月島蛍)
「何、入んないの」
「あ…うん!お邪魔します…!」
玄関で靴を脱ぐ。
家の中に人の気配がない。
「蛍くん、今日おばさんは…」
「今日は短大時代の同窓会だってさ」
「そうなんだ…」
それはつまり、今家に二人っきりと言う事。
それを意識した途端、の鼓動は速くなる。
月島宅に来るのは別に初めてではない、体だって重ねている。
でも、こんな風に感情的にここに連れてこられたのは初めてだった。
シンプルな月島の部屋に通され、はいつものようにベッドに腰掛ける。
いつもならここから学校の話をしたり、バレーの話をしたり、何て事のない話が始まるはずなのだが。
「け、蛍くん…?」
今日は違う。
がベッドに腰掛けてすぐ、その体は向きを変えられてしまった。
「…乾燥、気になるなら濡らせば良いよね」
「えっ……んんっ…!」
突如重ねられた唇。
苦しさに藻掻いてみるものの、後頭部にしっかりと手を添えられていては身動きがとれない。
いつものキスと、どこか違う。
月島は執拗にの唇を舐めていた。
もっと深くキスがしたいのに、それをしない月島にはもどかしさを感じていた。
それと同時に体の奥が、じわじわと熱くなってくるのも。
「はぁ…けい、く……」
息も絶え絶えに名前を呼ぶ。
「リップグロスだとさ…キスした時にベタベタするから嫌なんだよね」
だからリップクリームの方がいい。そう言った月島は再びの唇を塞ぐ。
口内で艶かしく動く舌。
行き場のない唾液が細く顎を伝った。
けれど、それだけ。
それだけなのだ。
「けい、くん……」
他の箇所には一切触れようとしない月島に困惑と懇願の混じった視線を送る。
「触って欲しいの?物欲しそうな目してさ」
その言葉を聞いての顔は一気に赤く染まる。
恥ずかしい、だけどそれを上回る、欲。
「うん……私、蛍くんに…触って、ほしい…」
素直にそう答えると思っていなかった月島は驚いて目を見開いた。
そしての制服のボタンに手を掛ける。
「言っとくけど…煽ったのはだからね」
両手で彼女をベッドに縫い付ける。