
第1章 成人男性を飼う。
偶然だった、
とある自殺の名所の樹海の目の前をゆったりと車で過ぎ去る。
…本当に偶然だったのだ、偶然にも私の視界のはじっこにその樹海に入っていく青いパーカーの男性がみえた。
私は不意に車を止めた。
偶然だった、偶然にも私がこの場所に居合わせ、偶然にも私は人より正義感が強かった…。
車のドアを開け、男性が入っていった樹海の方へと私は走り出す。
走ったのは正解だったようだ、男性は少し行った先ぐらいになるゆっくりと歩いていた。
私は男性に気づかせるために明らか様に大きな足音を立てて近づいた。
案の定その男性はこちらを振り向き、頭上に?でも浮かべるような顔でこちらを見る。
こちらは振り向いてくれたおかげで足は止まり私はすぐその男性の元へと近づくことができた。
『お兄さんこんな所で何してるの?ここがどんな場所かも知らないで入ったの?』
私は問いただすように話しかける。
男性は困ったような顔をし、その口ではっきりとその言葉を口にした…
?)ああ…分かっているぞ。俺もそのためにここに来たのだから…
…ひどく悲しそうな顔で目を少し伏せながら笑う。
『…何で?何で死ぬってことにたどり着いた理由?』
もしここで関係ない、と言われてしまえばその通りだ私はこの人にとって赤の他人であり、何者でもない。
?)少し…な?色々あったんだ…身内のことなんだがな…
まさかだったが、お兄さんは簡単ではあるが事情をざっくりと教えてくれた。
その内容は私が聞いてもあまりにも可哀想なものだった…私ももしそんな仕打ち受けたらちょっと病んじゃうかもしれないな…なんて他人ごとのようなことを思いながら少し頭を振る…。
『それでもせっかく頂いた命をこんなふうに粗末にするのはいけないよ?』
?)わかって…いるんだ…
『…つまり兄弟が怖いってことでいいんですかね?』
?)あっ…ああ。
『なら私の家に来ればいいんじゃないんですか?』
?)ええっ!?…でも申し訳ない…
『…あーも!ならもうこういうことでいいです。私はあなたを拾いました。』
?)えっ…
『お兄さんのお名前は?』
カ)カっカラ松…
『カラ松さん…ですね。よしカラ松じゃあこれから私がお前の主人だ。これなら私が勝手にお前を拾ってきた何の迷惑にはならないな?』
カ)え…
『よろしくカラ松』
カ)よっ…よろしく?
講して不思議な共同生活が始まった。
