第1章 (死んだら困る)
「ぇっな、 め…っ!」
「うるさい。黙って」
「何してるのちょっと!」
「黙れってば」
メアのふわふわの髪がすぐ目の前にある。綺麗な髪の一本一本まで見える。
さっきとは違う意味で心臓がどっくんどっくん、うるさい。
おろおろしていると、メアはまた騒がれると思ったのか、私の口を掌で塞いだ。
更に混乱する私。
「んむ…」
「………」
呻いたらぐっと手を押し付けられたのでさすがに黙った。息がしにくい。
それよりもメアは何してるんだろうと思ったら、私の体に頬から髪までぺたっとつけたままじっとしていて、どうやら胸に耳を当てているらしい。
え、まさか。
「……どっくんどっくん言ってる。生きてるな」
「ぁふぁうあむむん!」
当たり前です!と言ったつもりだった。
もしかしてと思ったけど、生死確認されてる!?
メアの手がすっと離れて顔が上げられ、私の目とメアの視線が重なる。
「あんなことくらいじゃ死なないよ!」
「死ぬかと思ったって言った」
「思った、って言ったでしょ。死んでないの!」
恥ずかしさを叱咤でごまかして声が大きくなる。なんなのもう、びっくりした。
冗談でやったのか本気でやったのかわからないところがまた凄い。
メアの手は暖かくて優しいけれど強くて、まだ唇にその暖かさが残っている。無意識に唇を手の甲で押さえて呼吸を整えていると。
その手首も取られて横に退けられ、身を起こしたメアの顔が忍び寄るように迫ってきた。
「……っ」
何か反応する前に、ふ、と優しく唇が重なる。
驚いて唇が開き、その隙間から息が漏れる。下唇をメアの舌先がするっと撫でた。
また噛まれるのかと思ったけれど、ついばむように食まれてそのまま温度が離れる。
「………っ! …!?」
「うん、息も
してる」
「…っし」
「し?」
「してるよ!!」
あぁもう、振り回されてばかり。
END