第1章 If 宮野真守 is ツンデレ……
『どうして、まもが謝るの……?』
私の肩に顔をうめるまもに頭を傾けた。後ろから抱きしめる力が強くなるのが分かる。
「いつも迷惑掛けてごめん。素直になれなくてごめん。嘘をついてごめん。…………泣かせてごめん」
だからどうして謝るの?
そう、言いたいのに、言葉が口から紡ぎだされることはなく、喉で勢いを失った言葉は空気となって口から漏れるだけだった。
「俺さ………ほんとは分かってたよ。今日は………、俺とお前が付き合ってから一年目の記念日、だろ?」
嬉しさと驚きで訳が分からなくなる。訳が分からなくなって、涙が次から次へと溢れ出た。
「俺、素直じゃないから………。お前の前だと、素直になれなくなるからあんま言えないだけで………」
『うん………うん』
分かってる。
分かってるよ、まも。
「お前のこと、好きなんだよ………。どうしようもねえくらいに………愛してんだよ」
少し掠れた声で紡いでくれた、愛の言葉。
私も愛してる。
そう答えたいのに、言葉にならない。言葉よりも感情の方が勝手に先走る。だから、私はまもの手にそっと自分の手を添えた。
この想いが伝わりますように。
そう、願いを込めて。
彼が私を抱きしめる力が少し緩んだのを合図に、私はくるりと回り、まもと向かい合う。少し、彼の目が潤んでいるように見えた。
「俺、素直じゃないけど……スズのこと………愛してる、から……」
赤面しながら口ごもる彼を、すごく愛しく感じた。
『私も……!私も、まもが大好きっ!愛してる』
「ば、ばか!…………それくらい、知ってる」
ああ、なんて愛しいんだろうか。
本当に私は………
まもが大好きだ。
「スズ、1回しか言わねーから、よく聞いとけよ」
『うん、なに?』
まもが大きく息を吸いこんで、軽く咳払いをする。そして、私に勢いよく抱きついた。
「愛してる。一生、俺の隣にいて下さい」
私はまもの首に腕を回して、更にぎゅっと引き寄せた。
『はい!もちろん!』
END