第7章 波乱ーII—
返却に行った時もカウンターにいたのはあの時の彼女。
今まで受付で同じ人に当たったことはなかったから、意外な再会だった。
ただ、それも
「すいません。」
「返却、お願いします。」
「はい。」
「ありがとうございました。」
彼女に本を渡し、カードを受け取る。
そのまま図書館を出て行き、
それだけ。
何かが起こるとは思っていなかった。
でも…何かを期待していた自分がいた。
……前に浮かんだ親近感から湧いた、同族意識か。
感じたよくわからない感覚に、そう結論づけて思考に蓋をする。
今は、他に考えるべき事があったから。
もうすぐIH予選が始まる。
3年生がいるこのチームで戦える、残り少ないチャンス。
そして、梟谷が全国5本の指に入る大エース擁する今、全国大会優勝を狙える またとないチャンス。
予選突破。全国出場。
その為に いかにチームを、自分を強くできるか。
俺が考えるべきは それだけで十分だ。
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そして、予選が終わった今。
自主練終わりの部室にて。
「えーっと……むかし、おとこ、……ハツカンムリ?して?」
「初冠“ういこうぶり”ですよ。先輩」
部屋の隅には、机にクシャクシャになったプリントを広げて頭を抱える木兎さんと、それを覗き込む赤石。
俺の目の前には……
「おい、赤葦。これはどういう事か、説明しろ」
先に帰ったはずの3年生トリオ。
鬼の形相の木葉さんと、どこか楽しそうな猿杙さんと小見さん。
「部室に女を連れ込むとは、いい度胸だなぁ、おい?」
「ってかいつの間に?全然気づかなかったわ」
「赤葦、案外やることはやってんのねー」
………面倒なことになった。