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ひとつだけ 【ハイキュー!!】

第6章 波乱





「よおーし!次もう1本…—」


キーン コーン カーン コーン……



木兎先輩を遮ったのは、時間を告げるチャイムの音。




「えっ、もうこんな時間…?」



慌てて見た時計が指すのは19時。
ここに来てから、いつの間にか1時間以上が経っていたらしい。




「さぁ、自主練はここまでにして片付けましょう」

「えっ、もう?まだもうちょい時間あんじゃん」

「…木兎さん、今日はこの後 空調の点検があるからいつもより早めに閉めるように言われてたの、もう忘れたんですか?」

「う、ぐ、いや、覚えてマス…」

「忘れてましたね」




会話だけ聞いていたら、どっちが先輩だかわからない。
というか、19時は“早め”の範疇に入るの…?




「それに、あんまり長いこと付き合わせたら申し訳ないです。 ただでさえ、木兎さんが無理やり頼み込んだんですから」

「おお、そうだった! こはる!」

「は、はいっ!」

「今日はありがとな!
トス、乱れた時のいい練習になったよ! サンキュー!!」



眩しい笑顔で言われた感謝の言葉。



「い、いえ! そんなこ、と、…」


そんなことありません! …反射的にそう言おうとしていた口が止まる。
……確かに感謝の言葉…なんだけど……?




“トス、乱れた時のいい練習になったよ!”





「…………。」





……ちょっと待った。

木兎先輩の雰囲気で一瞬聞き流しそうになってたけど、ちょっと待った。


……確かに、綺麗なトスは最後しか上げられませんでしたけど。
下手だったのは、もちろん自覚ありますけど。
その上での木兎先輩なりのフォローのつもりかもしれませんけれど。




………でも、






「先輩、それ! 全っ然! !嬉しくないです!!」




思いっきり下手だって言ってるのと同じですから!!!



夜の体育館に私の叫びがこだました。






この後、慌てた木兎先輩がフォローを入れるつもりで墓穴を掘りまくったことも、結局赤葦さんが出てくるまで事が収まらなかったことも、言うまでもない。





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