第5章 新たな出会い
「あの、さっき、私に渡したまま呼び出されて行ってしまったので…」
彼の様子を伺うと、驚いている…ように見える。いや、正直言うと表情があまり変わらないからよくわからない。
それが、不安になる。
「…わざわざこれを届けに?」
「は、はい…元はと言えば、私が悪いので…
あっあと、これも…!」
今度こそ赤葦さんの目が少し大きくなった。
私が追加で渡したのは、事の発端の新刊。
声をかけてまで探してたってことは、本当はすごく読みたかったはず。
どうせ届けるなら と宣言通りすぐに読み終わらせて一緒に持ってきたけど……
お節介だった、かな…。
いざ渡してみると スッキリするどころか、どんどん焦りが増していく。
「…あっあの、貸出の手続きとかは勝手にしちゃったんですけど…!」
ここで黙ったら、沈黙に潰されてしまう気がして、必死に言葉を紡いだ。
もう頭が真っ白になってる。自分でも何を言っているかよくわからない。
…やめときゃよかった。やっぱり、出しゃばらなきゃよかった。
心の中が後悔で埋め尽くされそうになったそのとき、
「…本当にすぐ読んだんだ」
「…!」
柔らかくなった、初めて見る優しい顔。
「楽しみにしてたから…ありがとう」
嬉しそうなその一言で、
私の緊張は、溶けてなくなった。
「オーーイ!あかーし!!!」
「ひいぃっ……!」
はずだった。