第68章 悩み*茶倉
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次の日の昼休み。
何も変わらず三人でご飯を食べて、昼練に行く予定だった。そのはずなのに。
「で、で…デート?」
その提案は唐突だった。
漫画か何かのように吹き出してしまうのを避けられない。
「そ、デート!」
楽しそうに頷く和くんと、神妙な面持ちの真くんが対照的で、思わず笑ってしまった。
「でも試合前にそんな時間ないんじゃ…?」
「もっともな疑問だが大丈夫なのだよ。」
聞けば、都合のいいことに他の部活が使うということでオフがあるらしい。しかも二日。
「じゃあ三人でお出かけするんだね。」
そんなの滅多にないから、ワクワクする。
バスケのこと以外で遊ぶなんて稀だ。
「いや、違うのだよ。今回は別々だ。」
「え?」
「ほらさ、オレたちいっつも一緒だろ。だから優ちゃんと2人っきりになったことがあんま無いって話になって…」
「それで俺達で話してそれぞれでデートという形になったのだよ。幸いなことに二日休みがあるからな。」
「そうすれば優ちゃんも自分の気持ち、わかるかもしれないだろ?」
そんな話をしていることなんて、もちろん私は知らない。
知らないところでも私のことを考えていてくれることが伝わってきて、心が暖かくなる。
「うん、わかった。」
この返事はただの肯定じゃない。
覚悟だ。決断の覚悟。その時は近づいている。もうきっとすぐそこまで。
(人を助けられる人。)
私の中でその言葉はもう何度リフレインしただろうか。
きっと、大丈夫。
もう心には答えがあるはず。
後はそれに気がつくだけ。
「よっし、どんなデートにすっかなー?あ、デートプランはオレたちが考えるから。優ちゃんは楽しみにしてろよ!」
「ああ、喜ばせるのだよ。」
頭では深刻なことを考えているのに、二人の喜々とした声に、つい笑顔になっていた。