第68章 悩み*茶倉
WCは驚くほど順調に進んでいった。
予選では二度目の誠凛戦。
たーくんの成長速度やテツくんの新技など、予想を上回ることも多々あったが、うちだって負けておらず引き分けと言う形で幕を閉じた。
一回目の誠凛戦で負けたことによる、真くんの勝利への渇望。
その飢えた目はゾクリとさせられた。
誠凛戦は毎回得るものが大きい。
選手のみんなそれぞれの成長に繋がっている。
マネージャーとしてそれは嬉しいことで、また改めて気合いの入ることだった。
とは言っても成長に休息というのは必要不可欠なもので。
監督の計らいで、今日はオフになった。
オフでもみんな自主練とかいって体育館にいるんだろうけどね。
ふふっと軽い笑いが漏れて、ちょっとだけ恥ずかしくなり周りを見渡せば誰もいないので、人知れず安堵の息をついた。
私は一人そんなことを考えながら廊下を歩く。
なぜ歩いているのかって言われると大した理由もない。
確かに落ちついて作業が出来る場所を探していたというのが表向きな理由だろう。
…でも心の奥では。
なんとなく歩いていたかった。
放課後の静かな学校を一人で歩きたかった。
ただそれだけ。
月日で数えれば、学校を離れていた時間はそこまで長くない。
それでもなんだか懐かしいような気分になるのは何故だろう。
私は変わっているのだろうか。
でもまだ結論はでないし、決断も出来ない。
それでも成長したといえるだろうか。
難しい。
人の悩みは尽きるものじゃないって実感する。
ふと教室を覗くと一人の女の子が窓際の席に座って夕日を眺めていた。
(…あの子は…?)