第56章 コワレユクヒビ*茶倉
離されたときにはもう力など残っていなかった。
「……ハァ…ハァ………茶倉。お前に言っておく。」
視点が定まらないまま目をそちらに向ける。
涙でぼやけてはっきりしない。
ただ真くんの真剣な雰囲気だけを感じた。
「俺はお前が好きなのだよ。……誰にも負ける気はない…!」
迷いなど感じられなかった。
その言葉は真剣すぎて、逆に怖いと思うほどだった。
言い終わると真くんは私を置いて去っていった。
誰にも、とは誰を指しているのだろう?
やっぱり和くんなのだろうか?
……好きってなんだろう。
ぼんやりとした頭でそんなことを思っていた。
心地よかった日々が崩れていく。