第52章 心は波にさらわれて…*茶倉
そんなことを考えていたからか、私に近づいてくる足音に気がつかなかった。
「茶倉。」
はっきりとしたその声に、体がピクリと揺れる。
振り返るとやっぱり真くんがいた。
「……真くん。」
こちらを見るその瞳から、逃げ出したかった。
だが、私が動くよりも早く真くんが私の隣に腰を下ろす。
そのまま私の右手に真くんの左手が重ねられた。
…………………………
どれくらい経っただろう。
お互いに沈黙を破らなかった。
波の音だけが辺りに響く。
そして真くんが前触れもなく口を開いた。
「……ーーーーーー。」