第3章 家族〔陸&天〕
IDOLISH7の七瀬陸と、TRIGGERの九条天は双子の兄弟。
これはごく一部の人しか知らない秘密事項。
もし外部に漏れれば、メディアが黙っているわけがない。
その秘密を守るのも私の役目だと自負している。
私は陸と天の幼馴染だから、彼らの事情はよく知っている。
家族のために九条天となってしまった、TRIGGERの訳ありセンター。
それを捨てられたと感じ違いした陸。
二人の再会はそれぞれをライバルとしてグループを背負う、悲しいものとなってしまった。
天が家を出ていってからというもの、私は陸の傍に寄り添い続けた。
病気で学校に行くことの出来なかった陸に、寂しい思いをさせたくなかったから。
陸がIDOLISH7となった今でもそれは続いている。
最初、陸は病気のことをメンバーには隠していた。
私も彼に口止めされて誰にも言うことが出来ずにいた。
紡さんや社長さんにすら、相談することが出来なかった。
毎日路上ライブをするたびに、陸がいつか倒れてしまうのではないかと不安になった。
結局、雨の中ライブをしたことで彼は発作を起こしてしまった。
あの時私はとても怖かった。
陸がいなくなってしまうのではないかと思うのと同時に、陸の夢が失われてしまうのではないかと思ったから。
「オレはやれる!だからIDOLISH7をやめたくないんだ!」
陸は必死だった。
天のことを追いかけるためにとアイドルになって、この業界へ入ってきた。
それを断絶させられるのがよほど怖かったのだと思う。
私も陸も、メンバーたちの答えを固唾をのんで待った。
「あなたはIDOLISH7のセンターです。やめてもらっては困りますよ」
一織くんの言葉で、私たちは未来への息を吹き返した。
彼の言葉が、陸が天のもとへと駆け上がるための道だと、そう思った。