第4章 それでも
キーを回して、車がエンジン音を鳴らした。
徐々に進むあたし達。
「ゆっくりでいいから、自分を好きになってあげてね。」
また呪文のように繰り返す岩本さん。
嫌でも言葉は耳に残った。
自分を好きになってあげる。
それが人間が生きる上で必要なことぐらい、あたしだってよく分かってる。
でも生きる事さえ放棄しつつあるあたしに、そんな事が出来るんだろうか。
「・・・はい。」
でも、こうやってあたしを愛してくれる人がいることは。
本当は嬉しいんだ。
たまらなく嬉しいんだ。
自己を承認されることが、こんなにも。
弱くても生きていていいんだって。
1人じゃないんだって。