第4章 それでも
車に戻って上着を返すと、岩本さんは素直に受け取ってくれた。
「で、何のつもりです?」
「あれ?忘れたんでしょ?」
「記憶が戻ったんです!・・・説明してもらってから忘れます。」
納得いかないあたしに降参したのか、岩本さんは真面目な顔をされて答えた。
「告白なんて、今の高野ちゃんには重いでしょ?」
「・・・でしょうね。」
他人事のように。
でもあたしも素直に答えた。
それでも岩本さんは怒る事なく続ける。
「ストイックな高野ちゃんに必要なのは、甘えられる男じゃなくて、自分と見つめ合う1人の時間だよ。」
予想外な言葉に、あたしは言葉を失った。
岩本さんはふっと笑う。
「君には素敵なところがいっぱいある。だから、もっと自分を好きになってあげて。」