第4章 それでも
頭の上に疑問符を浮かべるあたしを放置して、岩本さんはぐるぐると見晴台を暴れ回るばかり。
「俺もう全部忘れたもんね!」
あははっ!と大声で笑い走る岩本さんは、ともすれば狂ってしまったかと思うほど。
いや、岩本さん、説明してください。
「ほら、3、2、1、ぽかん!」
子供のようなことを言い出す岩本さんに、もう呆れてしまってあたしも笑えて来た。
「わーかーりーまーしーた!忘れた!はい、忘れました!」
ようやく走り回るのを止めた岩本さんは、大笑いして歩いて戻って来る。
「今日の晩ご飯、何食べたっけ!」
「それはちょっとおじいちゃんっぽいです!」
「あははははっ!ここはどこ!?わたしはだれー!?」
両手を口に添えて叫び散らす岩本さんは楽しそうで、あたしも一緒のポーズで叫んだ。
「あなたは岩本さんですよー!」
「そっかー!ありがとー!」
ようやく戻って来た岩本さんは、元の可愛い笑顔であたしを見つめた。