第3章 理解され
「馬鹿ですね。」
面と向かって岩本さんに言うと、ははっと乾いた笑いで返された。
「高野ちゃんは嘘つきだけどね。」
・・・嘘つき?
いつも何を考えているかよく分からない人だと思っていたけど、何を突然言い出すのか。
「俺の事嫌いって言ったけど、嘘だろ?」
ぐっと胸が詰まった。
「・・・嘘じゃないです。」
「そう?」
岩本さんは顎に手を当てて、うーんと何やら考え込む。
「そうだな。嘘と言うか、何だろう。怖い?」
また、胸が詰まる。
どうしてこんな、崖に追いつめられるような気分になるの?
「自分の嫌な面を見られるのが怖い。そうなんじゃないかな?」
そう。この人が、あたしの心にずけずけと土足で上がって来るから。
岩本さんはぼんやりと夜景を、いや、それより遠いところを見つめていた。