第2章 夜景の前で
ようやく上着を受け取った岩本さんは、ちょっと笑ってため息をついた。
「俺じゃあダメかぁ。」
さらっと手を引く潔さが、とても爽やかで好感が持てた。
「そんなはずないじゃないですか。」
「じゃあ、他に好きな男がいるの?」
「あはは!いませんよー。」
へらっと笑って言うと、岩本さんはさすがに真面目な表情になった。
やっぱり理由は知りたいらしい。
まぁそうだろう。誰がどう考えても、この2人は晴れてカップルになると見えていただろうから。
先ほど岩本さんがしたみたいに、あたしも笑ってため息を1つ。
「岩本さんって、案外馬鹿なんですね。」
岩本さんの顔が見れなくて、あたしは夜景に目を戻した。
「あたしは岩本さんが嫌いです。」
どうにか、笑顔を保つ事が出来た。