第1章 〜別れの始まり〜
ピンポーン。
仕事が休みの今日。
部屋の模様替えでもしようかと
朝からバタバタしてたあたしは
ほんの一瞬だけ
あなたを期待した。
でも期待とは裏腹に
インターフォンから聞こえてきたのは
無機質な少し低いハスキーボイス。
「神崎です。」
潤のマネージャー。
多忙なアイドルにはグループでも
ひとりひとりにマネージャーがつく。
神崎さんは潤の専属。
何度か面識はあるけど
それは当然 潤の彼女としてで
個人的に会ったことはない。
「お話しがあります。開けて頂いて
宜しいいですか。」
「あっ。はい。」
突然の訪問に戸惑うあたしに
神崎さんは抑揚のない声で言った。
最後にこの人に会ったのはいつだったかな。
いつでもクールで冷静沈着。
眼鏡をかけたその目は普段あたしが接する人の中で
群を抜いて冷たい。
あたしはこの人が苦手だ。
ドアを開けると一分の隙もないほどピシッと
スーツを着こなした彼。
その神崎さんの顔を見た瞬間
あたしは思ったんだ。
ああ怖いな。
きっと良くない話しだな、って。