第5章 前に進む*
笠松先輩にも許可を取って
コートには私、まりな、バスケ部の二年の先輩三人、先に五点取ったほうが勝ち。
コートの外には、ここの体育館の鍵を持っている笠間先輩、黄瀬くん、小堀先輩が終わるまで待っててくれている。
「笠間先輩…桜っち達、本当に大丈夫なんスかね?」
「俺は、あいつのバスケを一度だけ見た事があるが…上手いとかそうゆうレベルの話じゃねぇ。なんで選手じゃねぇのか不思議な位だ。」
あいつがもし男だったらキセキの世代と呼ばれてたはずだ。
「そんなに凄いんスか…?」
「まぁ見てればわかんだろう。」
「桜…本当に良かったの?嬉しいけど大丈夫?」
「なんで出るって言ったか自分でもわかんないけど…まりながあんな風に言われててムカついたし、バスケして勝てたら少しは変わるかもしれないって思ったから…だから勝とうね!まりな」
あーなんだろう。気持ちが高ぶってきて泣きそうな気分になる。桜が目を閉じ始めた…これはあの子の一種の儀式みたいなもの、目を閉じて。息を吸う。そして目をひらけば…ほらもうこんなに雰囲気が違くなる。まだ何もしてないのにすでに手に汗が出てきた。
多分ここにいる人皆同じ気持ちだろう…
「まるで別人だな。【奇跡の女神】って言われるだけある。緊張感が凄いな。」
信じられないッス。桜っちが目を開けた瞬間誰かと思った…俺の知らない桜っちがそこにいて、こっちにまで緊張が伝わってくる。
「小堀先輩…奇跡の女神ってなんスか?」
「お前知らないのか?無名だった中学を全中三連覇まで導いたって言われてる。」
「マジッスか!?笠松先輩は知ってたんスか?」
「あぁ…お前等キセキの世代と同じく世間の注目を浴びてた。あいつの感じる事、発言は絶対的信頼を誇った。あいつには全てが見えちまう…」
「なんスか…?それ?」
「オイ。始まるぞ。」