第16章 好き。すき。スキ*
授業が始まっても、全然頭に入ってこない。さっきの光景が頭から離れない…私が教室に戻ってきた後すぐに、黄瀬君も戻ってきたけど、何事もなかったようにしている…
「神白!!おい!聞いてんのか!?」
「えっ…?」
「何回呼べば、気づくんだ?!問3の答えは?」
今なんの授業だっけ?英語だ!!問3か…あれ?教科書…ない!?
私の机の上には、ノートも、筆記用具さえも置いていなかった。自分でもビックリする…今の私には、平常心すら保てない…全然だめだ。むしろ動揺しすぎて、わけがわからなくなってきた。
ーー遠慮しないからね…
瀬戸さんの言葉が、胸にズキズキ刺さる。
「先生、すいません…ちょっとサボります…」
「おっ…おい!神白!?ちょっと待て!!お前どこ行くんだ!!」
「Please don't call out to me…」
(私に話しかけないで下さい。)
私は、その言葉を残して、フラフラ教室を出た…本当に自分が情けない。嫉妬するってこんな風になっちゃうんだ?
はぁ…さっきまで保健室にいたから今度は、どこに行こう?
「ちょい待ち!桜!」
「まりな…」
また来てくれた…今の私は、まりなに会わせる顔もないよ…せっかく応援してくれてるのに。ごめんね…
「ごめんね…まりな…いつも心配かけて、でも大丈夫だから…」
「どこが?大丈夫なの?アンタが、いやに冷静になってる時は、もの凄く動揺してるって事でしょ?」
どこまでも、まりなは、私を知ってくれている…少し気合いでも入れてもらうかな?
「まりな!!お願い!私を一回引っ叩いて?!」
「はぁ…何言い出すかと思えば…いいの?」
「うん!ちょっと頭冷やしたいから…」
「歯食いしばりなよ?」
目を瞑る…
一向に、まりなの手は、おりてこない…
そして、私を待ち受けていたものは…
温かくて…まるで木漏れ日に包まれているよな…
まりなの腕の中だった。