第16章 好き。すき。スキ*
自分の教室に戻ろうと階段を登り始める。すると上の階から悲鳴にも似た叫び声が聞こえてきた…
「なんだろう??」
私は、少し駆け足で階段を登る。次から次へと私と入れ違いに駆け下りてくる同級生たち…なんか、よくないものでも見たような顔をしている。
そして、ようやく叫び声が聞こえた理由がわかった…
そこにいたのは、気まずそうな顔をしているまりなと黄瀬君、そして黄瀬君に背負われている瀬戸さんがいた…
「桜…!」
「まりな…瀬戸さんも、どうしたの?何かあったの?」
心は、相当乱れているのに…それとは裏腹に冷静な私がいた。
「瀬戸ちゃんがね階段から落ちちゃって…歩くの難しそうだったから、それでキセくんが助けてあげて…ねっ!キセくん!」
「そうっス…俺のせいで、瀬戸さんが怪我したから…」
「大丈夫?瀬戸さん?」
「うん…ありがとう。全然大丈夫だから、気にしないで!」
「怪我ひどくないと良いけど…黄瀬君。瀬戸さんの事ちゃんと保健室まで送っててあげてね…?じゃあ、私戻るね。」
「待って!桜!!キセくん!私、桜と戻るね!瀬戸ちゃんをよろしく!」
「ウッス…」
「神白さん!ありがとう…あと、私…遠慮しないからね!!」
そう言う、瀬戸さんに嘘でも微笑む事しかできなかった。
馬鹿な私にも、わかる。きっと黄瀬君の事を言ってるんだ…でも私が黄瀬君を好きって知らないはずなのに…
「桜!!さっきのは、キセくんのファンの子達が瀬戸ちゃんを突き落として、それでキセくん自分のせいって思っちゃったから…」
まりなが、ひどく焦ってる。あぁ…そっか…きっと私を心配してくれてるんだ?
「酷い事するよね…でも、きっと大丈夫!黄瀬君がついてるから!」
そうじゃない…本当は、凄く嫉妬したんだ…黄瀬君には、ちゃんと瀬戸さんを送っててあげてねって言ったけど…守ってあげてねって言うつもりだった…でも、言えなかった。嘘でもそんな事言いたくなかった。怪我をした瀬戸さんにまで嫉妬してるなんて私どうかしてる。自分の嫌な部分が沢山出てくる…
もっと、冷静にならないと…