第16章 好き。すき。スキ＊

黄瀬side

今は、自習の時間。
桜っちの顔を見てきたばっかなのに…またすぐ会いたくなる。気づけば桜っちで頭がイッパイ。他の事が入る隙間が一ミリたりともないくらい桜っちで埋め尽くされていく…

「キセくん！キセ！キーセー！！！聞いてんの？！」

「わッ！！まりなさんか！なんスか！？」

「桜なら、きっともうすぐ戻ってくるよ！」

「アハハ…顔に出てたっスかね？」

「もろ顔に出てた！アホみたいにね！」

自分でもアホだと思う…海常のエースの俺がモデルの俺が、たった一人の女の子にこんなにも気持ちが惑わされるンすから…

自習が終わり我慢できずに、桜っちを迎えにまりなさんと、保健室に向かう途中階段を下っていた。

「キャーァァ！！」

上の階から悲鳴が聞こえてきた。俺は、まりなさんと顔を見合わせてその声がする方に向かう。

「えっ！？瀬戸さん？！！どうしたんスか？！」

そこには、しゃがみこんでいる瀬戸さんがいた。

「黄瀬くん…矢野さんも、ちょっと足痛めちゃって…」

「瀬戸ちゃん…もしかして誰かに突き落とされた？」

「うん…」

「やっぱり…」

まりなさんの話によると俺のファンの子たちは、まだ瀬戸さんに目をつけてたらしい。

「ゴメンね。瀬戸さん…とりあえず立てる？」

「うん…あ…痛っ！！」

「これじゃ歩けないよね？私に捕まって？」

「ううん！本当に大丈夫だから！」

俺のせいでこうなったんだ…

「瀬戸さん…乗って。」

俺は、しゃがんで自分の背中を指した。

「えっ？！でも…」

「良いから…こうなったの俺のせいっしょ？」

まりなさんは、黙ってそれを見ている。本当は、桜っち以外の女の子にこんな事したくないけど…状況が状況だ。

「ありがとう…黄瀬くん…」


こんな時に俺は、桜っちの事を考えてしまった。もし桜っちが同じ目にあったら俺は正気でいられるんスかね？

きっと自分が止められなくなる…そんな気がして仕方ない。