第1章 太陽と月
4時限目終了のチャイムの音が昼休みを告げる。
『よーう!』
「うおっ!!」
俺が席を立とうとした瞬間に、俺の名前を呼び、背中に抱きついてきた奴がいる。
暁月椿。
こいつは普段、誰これ構わず抱きつくようなバカではない…はずなのだが、俺や夜など、心を許した人間には相当懐いてくる。
というか椿、風邪でも引いたか?
少しいつもより声が低い気がする。
俺は後ろを振り返り、椿の手首を掴んだ。
「おーい椿ちゃん?」
『ん?
どうしたの、陽?』
急に手首を掴まれた為か、きょとんとした表情で俺を見つめる。
俺はこの表情に弱い。
「こうやって無防備にオトコに抱きつくの、やめた方が良いよ?
何されるか分からないじゃん?」
『…何されるの?』
眉を寄せ、困ったような顔をする。
天然なのか、それとも全て計算なのか、こういうところも可愛いと思ってしまう俺は単純なのだろう。