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歌を奏でて(詰め)

第6章 シーザー×ドーナツホール


「おい、お寝坊奏は何時まで寝ているつもりなんだ? 早く起きないと飯抜きにするぞ」

私の大好きな甘い甘い声。

私の大好きなシャボンの良い匂い。

「シー……ザー…?」

私の大好きなシーザー。

「え、何処? 何でシーザーが? わ、私…どうにかしてる、の?」

目を見開き、シーザーの綺麗な頬を付かんで挙動不審に言葉を発する。

そんな私の様子を楽しそうに目を細め、その大きな手で優しく頭を撫でられた。

「寝惚けてるのか? 可愛いな、ほら、ちょっと掴まってろ」

軽々しく私を持ち上げてリビングへと歩いて行く、良く考えて見るとどうやら此処は私の家らしい。

しかし、その私の家は何ヵ月も怖くて立ち入れ無かった場所…だってシーザーと一緒に住んでいたから。

だから本当は家具やら何やらでグチャグチャに荒れている筈なのに、前の様に綺麗な状態で人が住める様な場所では無いのだ。

夢…私の孤独心が産み出した自分勝手な妄想でしかない本物の様なシーザー。

「うん…うん、離さないで、もう一生…離さないでね…馬鹿シーザー…」

彼の首にすがり付き、涙ぐみながら私は震える微かな声で呟く。

今だけでも良い、もう感じる事の出来ない温もりを今だけでも良いから感じさせて。
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