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歌を奏でて(詰め)

第6章 シーザー×ドーナツホール


どうして…、神様は本当に不平等だ、人が一人死んだぐらいで皆が悲しむ訳でも無く、人が沢山死んだぐらいで世界が止まる事は無い。

『奏、俺は必ずお前に相応しい男に成って戻ってくる…だから俺を待っていてくれないか?』

その最後の一言を今でも覚えている、何度も夢にまで見た場面。

あんなに格好良い事を言っておいて、私をこの独りぼっちの世界に残して逝くの?

「意味…解んないよ…」

古くなった銀のネックレスを握りながら大粒の涙を溢していく、シーザーが唯一、私に遺してくれた大切なネックレス。

そのネックレスにはシーザーと私の名が刻まれてはいるが、もうその名には意味を無くしている。

居ないんなら、そんなの名前が合ってもガラクタと同じよ…そんな事を思いながらも捨てられ無い私の方がガラクタなのかもしれないけれどね。

「……どうしようも無いよね、私…なんか、何時もシーザーに迷惑掛けていたし…シーザーの役にも立てた事なんて無かった…」

「本当に私の事を好いてくれていたなんて今になっては…解りもしないし、…ねぇ」

「会いたいよー……」

目の前が涙に濡れて酷く歪んでいく、嗚呼、何て居心地が良いんだろうか。

何処かに誘われる様にして私は幻へと入り込んだ。
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