第19章 ふたり
「…フ。まあいいじゃない。モテてんだから、チャーミーな鼻がさ」
「…聞くのもイヤだが、お前さんまさかの鼻目当てか?」
「ブッ。かもね!アハハッ」
笑いながらラビュルトがカクに勢い良く抱き付く。背丈の変わらないラビュルトを抱き止めかねて、カクは後ろ向きに寝台に倒れた。
「…ふ…ははッ、バカタレ、いきなり抱きつきおったら危なかろうが!」
「急にそうしたくなったのよ。しょうがないでしょ?」
毛布を体から解いて互いの体を包み、ラビュルトが喉を鳴らした。
「おやすみ、大工さん。もう寝るわよ?」
「ああ、ゆっくり休め。ワシも寝る」
片腕にラビュルトの頭を載せて、カクは目を閉じた。触れ合う肌が温かい。ただ、温かく、心地良い。
満ち足りた思いに眠気が被さった。ラビュルトがはやたて始めた小さな寝息が、ますます眠気を膨らませる。
ストン、と、カクは子供のように他愛なく眠りに落ちた。
考え事は明日ひとりになってから。
今はふたり。
ふたり。