第12章 家の裏の畑
「ああ、ジュベが来てるんでしょ?」
「ベンサムも来てるの」
「はい?」
「ベンサムよ。あなたの大好きな」
「うそ!ホントに!?ヤだ、ジュベとベンサム!盆と暮れが一緒に来たみたいじゃない?」
ラビュルトが両手で頬を押さえて目を見張った。零れそうに開かれた瞳が、見るからに嬉しそうな色を帯びる。
「・・・何じゃ、それは」
黙って話を聞いていたカクは、ここに来て堪えきれずに低ーい声を出した。腹に力の隠った剣呑な声だ。
「ジュベやらベンサムやら誰の事じゃ?」
ラビュルトの頭を大きな掌で鷲掴みしてその顔を自分の方へ向けながら、カクはこれ以上なく渋い顔をした。
「びっくりするわよ」
ラビュルトが真顔で答える。
「すっごく素敵なの」
「あ?ようわからん。と、いうか、何ぞ腹の立つ。ワシャムカついてきたぞ」
「ヤキモチ?」
「む···」
「あのね。ヤキモチ妬くなんて可愛いなって思うけど、全然必要ないわよ」
ラビュルトはにっこり笑ってカクの耳を引っ張った。
「会ってみたらわかるわ。第一アタシ、彼らに嫌われてるのよね、残念ながら」
「アンタがやたらと抱きついたりキスしたりするからでしょ。二人ともそういうの厭なんだから」
マリィが呑気に言うのに、カクの目が吊り上がる。
「···何ぞますます腹の立つ···」
「素直なのねえ、カク」
面白そうにカクとラビュルトを見比べて、マリィは泉から溢れる水で手を洗った。
「まぁラビュルトの言う通り、会えばわかる事よ。さ、うちに入りましょう?」