第27章 アタシの男
「いいのかよ。結構な大事になりかねねえ話かも知んねえぞ?」
「何が大事かはアタシが決める。アタシの事に口出しは無用よ。でもまあ、アンタ結構いいヤツよね。アタシ、お節介は嫌いじゃないんだ」
大きな口をニッと笑わせたラビュルトにアブサロムは寸の間詰まり、ちょっと赤くなった。
「まあな。見直したか?」
「見直す事ないでしょ。変わっちゃいるけどアンタ正直そうだから、最初からアンタはアンタね」
砂漠の王子を伴ってこちらに近付いて来るカクをじっと見ながら、ラビュルトはあっけらかんと言った。裏も表もない、聞いている相手がいるかどうかすら気にもしていない様子でポンと出た言葉。
アブサロムはラビュルトを見、近付いて来るカクを見、自分の左手首に目を走らせた。
「お互い下んねえ事になってんな、ラビュルト」
「アタシは仕事をしてんの。下らなくなんかないわよ」
「そうか?」
会場を見回してアブサロムは口角を上げた。
「…顔見知りばっかだって?本当にそうかよ?」
「……何よ、絡むわね」
眉をひそめ、カクから視線を外してこっちを見たラビュルトに、我ながら情けないが顔が綻ぶ。
「鼻の高え王子様が来たからって浮かれて忘れんじゃねえぞ。お前は今仕事中だ。て事はオイラと"親しい"ラビュルト·エンダなんたからな?」
「言われなくたってわかってる」
「そうか?しっかりしとけよ」
訝しむラビュルトを尻目に再び会場を見回して、アブサロムは白茶けた髪を素っ気なく纏めた初老の女に目を据えた。ゼラニウムレッドのドレスが映えて、スラリと無駄のない体躯に隙がない。鮮やかな顔立ちがボン·クレーとカクの連れている子供らを思わせる。
カクの肩越しに会場の扉が開いてラビュルトが目を見張った。押し出しが強く背の高い人影。
「父さんだわ…」
「…ドフラミンゴはお楽しみだな」
何処かに仕掛けてあるだろうモニターを探りながらアブサロムが顔を歪める。
「役者が揃って来やがった」