第25章 パートナー(仮)
パーティに顔を出す段になってエスコートされる事になった相手は、ドフラミンゴではなかった。
訳も分からないまま訳の分からない相手に腕をとられ、ラビュルトは笑顔でひそひそ呟いた。
「…あのさ、アタシ、今日はアンタと仲良くしなきゃない訳よね?ちょっと事前の打ち合わせが足りないと思うのよ」
パーティ会場の照明やテーブルに煌めくキャンドルが熱い。さして塗っても来なかった粧いが早くも煩わしく、眉根にシワが刻まれるのがわかる。
「アタシ、アンタの名前も知らないんだけど」
りゅうとしたタキシードを着込んだ一日限りの相方の顔をためつ眇めつ眺めながら、ラビュルトは小声で続けた。
「…アンタ、獣人?獣人よね?…多分獣人なんだろうけど、何か変じゃない?顔の縫い目が頑張りすぎてない?」
「…気にすんな」
「気にしてんじゃないわよ。仕事しようっての!ちょっと、アンタ何者?」
「フ。おいらか?おいらはフリーなゴーストライター…」
「黙れ。アタシのニコラス・ケイジにアヤつけよっての?」
「バカ、そら"ゴーストライダー"だろが!大体お前のニコケイじゃねえ!みんなのニコケイだ。ふざけんな!いいか、よく聞け。おいらはフリーなゴーストライターの…」
「変な名前」
「名前じゃねっつんだよ!職業だっつの!」
「聞いてないわよ、仕事なんか。どうせドフラミンゴの腰巾着なんでしょ?」
「そんなんじゃねえ!バカにすんな!おいらはな!……ちょっと下手踏んで捕まって言いなりになってるだけだ…」
「…尚悪いじゃない。何なの、アンタは」
「アンタアンタうるせえぞ!アブサロムだ、バカ女」
「アタシだってバカ女じゃないわ。ラビュルトよ」
「なーにがラビュルトだ。たくこのブ……」
言いかけて改めてラビュルトの顔を見たアブサロムは、パチンと口を閉じて目を瞬かせた。
「スじゃねえな。アンタ美人じゃねえか」
「そう?そりゃどうも」
素っ気なく肩をすくめたラビュルトに、アブサロムは尚も熱心な視線を向ける。
「うん、なかなか見れる。悪かない」
「ジロジロ見ないでよ。アンタとアタシは"親しい仲"なのよ?知り合いの顔をそんな風に見る?普通にしてなさいよ、せめて態度だけでも」
「態度だけでもってどういう意味だ」
「そのまんまよ。もう見た目は諦めるから、振舞いだけでも普通にしろっていってんの!」