第24章 ひと粒の気持ち
駱駝に乗って行くというボン·クレーを押し止め、カヤンを風呂に入れ、二人の身支度中モモをあやし、呼び出した車に乗り込んだときにはカクは既にゲッソリしていた。
「アンタ、帽子被ったまンま行く気なのン?」
エンダの家で見た白いスーツにサテンの真っ青なシャツ、ピンクのシルクタイを身に着けたボン·クレーが非難がましげにカクの頭を突付いた。
「止めんか。気休く触るんじゃないわ。こりゃワシの正装じゃ。ほっとけ」
シッシッとボン·クレーを手で払ってカクはキャップを被り直した。
「やっだァん、野球帽被った鼻とパーティなんか行ったら目立っちゃうじゃなーい。アチシ悪目立ちはゴメンよぅ」
「野球帽は止めい。キャップじゃ。お前さんとおりゃ大概の悪目立ちは霞むから安心せい」
「ホントだよ。青のサテンは止めて欲しかったな。お揃いみたいじゃないか」
藍染のガンドゥーアを纏い白いガウン状のマントを羽織ったカナンは、確かにボン·クレーの色味とお揃いの感がある。
「変に似合ってるのが厭なんだよね。ペテン師みたいに見えるぞ、ボン·クレー」
「フン。アンタも仕上げにピンクのターバン巻いたら完璧だったのに、何で厭がるのよン?」
「ターバンは大人の男のものだ。私にはまだ早いんだよ」
満更言い逃れでもない真面目な様子で言ってから、カヤンは顔をしかめる。
「しかもピンクって、何を考えてるんだ。絶対あんなもの身に着けないからね、私は」
「ピンクの何が悪いってのよン!アンタピンクをバカにする気!?」
「馬鹿になんかしない。苦手なだけ。ホントピンク好きだよね。駱駝もピンクだもんな」
「ハイ失格オカマ失格!残念でしたァ!ピンク嫌いのオカマなんてアチシは認めないわよン、絶対!」
「そう。じゃあいよいよピンクは身に着けない事にしよう」
「よっく言うわねィん!ピンクの駱駝はアンタんとこから来たんでしょン!?えっらそうに、このヤカンドカンバカン!」
「うるさいなボンクラボン·クレー。ピンクのタイで口を塞ぐぞ」
「ピンクに塞がれんなら本望だわ、ゴラ!」
「……オカマってみんなこうなのか?不思議だな…」
「あン!?オカマに文句つけよっての!?いー度胸じゃなーい?アチシたちオカマなんかアンタ、究極の新人類なんだからねィん!?わかってんの!?」
「…何だ、それ。全然わかんないよ」