第23章 ドンキホーテ
顔を歪めたラビュルトに、ドフラミンゴが満足そうな表情を浮かべる。ラビュルトはドフラミンゴの足元に唾を吐くと、口元を拭って笑った。
「……アタシはそんな変な名前じゃない。鳥肌が立つわ」
「それがどうした。お前がどう思おうと俺には関係ねえ。わからねえのか?」
「…ふん。アタシがわかろうがわかるまいが、それも関係ないんじゃないの?」
ラビュルトが辛辣に放った言葉に、ドフラミンゴは顎を上げて笑った。
「その通りだ。何だ、満更馬鹿じゃねえな。ますます気に入ったぜ。お前とは楽しくやれそうだ。なあ、ラビュ?」
「……アタシをそう呼んでいいのは、アタシがそれを許した相手だけよ。アンタにはラビュルト宮って呼んで貰った方がいいみたいね」
「俺がお前をどう呼ぶか決めるのはお前じゃねえ。そうだろ?」
「アタシがそれを許すかどうか決めるのはアンタじゃないわよ」
「俺は誰かに何かを許して貰う必要はねえんだ。死にたくなけりゃちゃんと呑み込んどけ」
「バカね。殺されたって許さない事は許しゃしないわ。臭いものに蓋をして悦に入ったって何にもならない。脅して痛めつけてねじ伏せられるのは体だけよ。人の心は力じゃ動かない」
「面白ぇ事言うじゃねえか。それが本当かどうか、見せてみろよ、ラビュ」
「ラビュって呼ぶなって言ってんのよ!鶏男!」
「こんなゴージャスな鶏がいんのか、ここらは」
「いたらひねり殺してるわよ」
「ふ…ハハハハハッ、いよいよ気に入ったぜ、ラビュ。鼻っ柱が強ぇ。流石俺のイトコだ。お前が男なら良かったのにな」
「何それ、褒めてんの?」
「ああ、最高にな。ドンキホーテファミリーにようこそだ、ラビュ」
「何がドンキホーテ…道化だわ…。アンタに褒められても全然嬉しかないのよ。けなされてた方がマシ」
柔らかいところを針で突かれたようにラビュルトは顔を歪めた。
キャップの落とす影から率直に吐き出される朴訥な賛辞と、木の匂い。
うちに帰りたい。
カクのいるうちに。