第71章 ※デリバリーサンタ 十四松
主人公視点
(あーあ。イブなのに仕事なんてつまんない…)
年末は演奏会シーズン。
日本では年の暮れにベートーヴェンの第九が定着しており、大抵どこの楽団も演奏会プログラムに取り入れる。
ご多分に漏れず、わたしが所属するオーケストラも第九を演奏する。
しかも、クリスマスイブとクリスマス当日の2日連続である。
それに、年始にも豪華な海外のソリストを呼んだ大きな演奏会を控えている。
そんなわけで、仕事に忙殺され十四松くんに会えない日々が続いていた。
(十四松くん…初詣は…一緒に行けると…いいな……)
蓄積された疲労は、わたしのまぶたを重くする。
ウトウトと眠りかけると、突然部屋にビュウと冷気が舞い込んできた。
「さ、寒いっ、って…えっ!?」
ベランダからは風の音。
前にも似たようなことがあったような…。
窓の前に人影が見える。
テーブルランプをつけると…
「メリークリスマーース!!」
「十四松くんっ!?」
「十四松サンタだよ!!」
黄色いサンタ服を着た十四松くんがいた。
「ど、どうしたの!?こんな夜にそんな格好して?」
十四松サンタはニッコリ微笑み、肩に担いだ白い袋から何かを取り出した。