第69章 ※デリバリーサンタ チョロ松
チョロ松視点
クリスマスってさ、一年で最も恋人たちが無駄に盛り上がる日だと思うんだ。
みんな毎年飽きもせず、よくもまぁお金と時間をつぎ込むよね。
クリスマス商戦の餌食になっているというのにさ。
お金の使い方間違ってるよ。
仮初めの幸福感に酔いしれるためにお金をばら撒くより、普段の生活を充実させる方が、どれだけ実りある人生を送れると思う?
なんて去年まで思っていた、チェリーな僕よさようなら。
彼女が出来たら話は別!!
クリスマスサイッコーだよー!!
クリスマスソングがテレビで流れる度に、僕のトナカイが火を噴くほど興奮が最高潮!!
初めて過ごす彼女とのクリスマス!
幸福感ハンパない!!!!
イルミネーション見た後は、バカ高いクリスマスディナー予約して、夜はラブホに直行。
それが、クリスマスデートの定石。
だがしかし!
この僕チョロ松サンタは、そんなありきたりな演出はしない。
ってゆーか、クリスマスディナーは明日予約した。ラブホも。あ、結局定石通りだ。
イブである今夜はいわゆる前哨戦。
計算しつくしされた完璧なサンタを見事に演じ、主ちゃんを聖なる夜にメロメロのどぅるっどぅるのトロットロにしてみせる!
るんるん気分で白い袋に荷物を詰めていると、
「ゔえぇぇぇおぉぉぉお…」
「あ"ーーめ"ーーま"ーー——…」
クリスマスに予定の無い、新品ゾンビ松達が家中徘徊を始めた。
クリスマス…なんて恐ろしい日なんだ。
恐らく、魔法使いに片足突っ込んだ童貞達にとって、これほど残酷な日は他に無いだろう。
僕も主ちゃんがいなければ、今頃こいつらみたいに腐った臓物を垂れ流し、人の幸福を呪うリビングデッドになっていたというのか…。
「いってきまーす」
僕は変わり果てた姿の兄弟達を尻目に、緑のサンタ服に着替え家を出発した。