第64章 ※トッティの葛藤 末弟END
あつしくんと解散し、赤塚駅に帰ってきた。
公園のベンチに腰掛け、ひとりホットミルクティーを飲む。
冬の空気を吸い込めば、酔ってボンヤリしていた頭が冴え渡る。
白い息を見つめながら、あつしくんとの会話を頭の中で反芻した。
女の子のこと、趣味のこと、車のこと、仕事のこと、将来のこと…。
(ボクがあつしくんに勝るもの、ひとっつも無かった…)
いや、唯一あるとすれば可愛い彼女がいること。
でもそれは、なんか違う。
男として仕事のキャリアとか、向上心とか、そーゆーのが惨敗だった。
前までは、話してもこんなブルーにならなかったのに…。
なんでだろう?
主ちゃんがいるから?
ボク……もしかして、
「焦ってる?」
缶を持つ手が震える。
時計を見ると23時を過ぎていた。
けれど、なんとなく、兄さん達の待つ家に帰りたくなかった。
みんなといると、この焦りとか苛立ちが消えちゃって、いつもみたいにこれでいいのだーって開き直っちゃいそうだから。
楽しくて自堕落な生活に逃げちゃいそうだから。
そして…クズ同士金魚のフンの背比べをして、優越感に浸っちゃいそうだから。
「ハァ…もうみんな寝たかな」
10代の頃、何にも考えないで楽しく過ごしてた。
いい意味でも悪い意味でも楽観的でさ。
まだまだ若いから、そのうちどうにかなるだろうって、心のどこかで思っていた。
でも、20代になると徐々に現実が見えてくる。
10代のボクが遊んで暮らしていた時、黙々と努力を重ねていった人達と、圧倒的な差が開き始めたんだ。