第59章 一松とにゃんにゃんしたい時に読む話
主人公視点
「主…起きて……」
夢の中にいたら、一松くんの声がボソボソと頭に響いてきた。
彼と一緒に眠ると、あったかくて気持ちよくて、いつも熟睡してしまうのだ。
それに…夜遅くまでいろいろと…激しかったし。
現実世界の扉へ向かうわたしの足を、夢世界の見えない手が引っ張り離さない。
現実と夢の狭間で意識が朦朧とするわたしに、またしてもボソボソとどんよりした声が囁いた。
「…動物園行かないの?べつに、行かなくてもいいけど」
(ね…むい……)
寝返りを打ち、一松くんに背中を向けると…
「…猫…トラ…ライオン…チーター…ヒョウ…ジャガー……ミーアキャット…」
(最後のは…ネコ科じゃないような…)
背中から呪文のように、ネコ科の動物を唱えられた。
禍々しい声のせいで、夢の中で黒魔術の祭壇に寝かされる。
蝋燭を持った悪の司祭がヴェールを外すと、出てきた顔は…
「ミ、ミツゴロウさん…」
動物と心を通わせるカリスマだった。
顔をクシャっとさせてすごく愛に溢れた笑顔だ。
…すごく不気味だ。
変な呪文のせいで夢世界が悪夢になった。
「一松ですけど」
寝ながら声を出していたようで、不機嫌な声色になる一松くん。
起きたい…けれど疲れすぎて起きられない。
浅い睡眠ほど寝苦しいものはない。
「ん……」
寝ぼけながら布団を被ると、
「起きないなら、強行手段…」
「ぅ…ん…ふぁ……?」
後ろから抱きしめられ、両胸を激しく揉まれた。