第58章 ※十四松とのんびりしたい時に読む話
しもやけになってしまった十四松くんの首まわりに、トド松くんがマフラーをかける。
「十四松兄さん、デート中に死にかけるとか勘弁してよ!」
「凹みー……からの凹みー……」
「そうそう、たまには反省して」
「あっ、そーだっ!」
十四松くんは落ち込んでいたのに、急に何かを閃いた様子。
手をポンとついて頭に豆電球を光らせたかと思うと、かまくらの中から飲みかけのおしるこを持ってきた。
「トッティー!!これぼくの気持ち!」
「え?ありがとう…ってつめたっ!?こんな冷え冷えの缶に口付けたら、くっついたのち皮剥がれるからっ!」
「あははっ!トド松くんハイこれ!」
わたしは新しく買ってきたおしるこを渡した。
十四松くんにはホットレモンだ。
「ありがとう主ちゃん、はーあったかーーい!」
「ホッティ!」
「助けに来てくれてありがとうね。これから友達のとこに戻るの?」
「あー、もういいんだ。二人には急用が出来たって言って断ってきたから」
ほんの一瞬、笑顔が少しだけ寂しそうに見えた。
(女友達より十四松くんを心配して来てくれたんだ…)
トド松くんが来てくれなかったら、今頃どうなっていたんだろう?
考えただけで背筋が凍る。
「本当にありがとう、何かお礼したいな」
そう言うと、トド松くんはイタズラな笑顔を向けてきた。
「じゃあ、お詫びに主ちゃんとデートさせてもらおうかなっ?」
「トッティ!?」
「ふふっ、三人なら喜んで!」
「デートッティ!!」
「三人なら」に十四松くんも納得したようだ。
「まーそれでもいいけどさ。カワイイ子と出かけるのに変わりはないし!」
「ぼくねぼくね、お腹すいたー!!」
「そうだねっ、三人でランチしよう!」
「オッケー、行こう!主ちゃん!」
さりげなくトド松くんがわたしと手を繋ごうとすると、十四松くんが間に入り手を繋いで歩き始めた。
「ってお前かよっ!」
「んふ、あったかーーい」
「きもちわる!」
そう言いながらも、三人の手は繋がったままだ。
真っ白な街に、ピンクと黄色はよく映えるなぁ、なんて思いながら、わたしも十四松くんの手をギュッと握りしめ歩くのだった。