第8章 一松の嫉妬
ポエムを聞かせ終わりチラリと一松くん見ると、眉間に縦皺を寄せながらジトッとした目つきの彼と目が合った。
「何その、イタくて吐き気がして胸糞ワルくなる言葉の羅列…。それ、記憶から抹消しないと脳神経に異常をきたすよ」
「あ、あはは…そこまで言わなくても…。この間、一松くんを家で待っている間に、カラ松くんが自作のポエム集を読ませてくれたんだよ」
「……」
急に黙り込んでしまった。
「…えーと、猫座だっけ?スマホで検索してみようかなっ」
「…ねぇ」
「わ、ちょっと!」
わたしがバッグからスマホを取り出そうとすると、突然肩を押され、草の上に押し倒された。
スマホが手から滑り落ちる。
「急にどうしたの!?」
「……」
掴まれた肩が痕が付くくらい圧を加えられる。
「一松くん…いたいよ」
「…おしおき」
「え?」
「2人でいる時に、クソ松の話をした主には、罰を与えないとな…ヒヒッ」
妖しい笑みに背中がゾクリと寒くなった。
「ま、待って!こんなとこでイヤだ!やめて!離して!!」
ジタバタ抵抗すると、爪で一松くんの頬を引っ掻いてしまった。
「あっ、ごめんっ」
怒られると思い、思わず目を瞑る。
——けれど、特に何も起きなかったのでうっすら目を開けると…
「イイねぇ…その反抗的な態度…」
一松くんは、恍惚の表情を浮かべわたしを見つめていた。
「ほら…おれを拒絶しろよ……逃げてみなよ?」
「……っ!」
彼の瞳がギラリと妖しく光ったかと思うと、首筋に牙が傷痕をつけていった。