第47章 僕、明日から本気出すから チョロ松
セックスを終え、急いで部屋を片付け最中を食べていると、誰よりも早く一松が帰ってきた。
「一松くん、こんにちは!」
「……」
一松は無口なまま、ものっすごい挙動不審になっている。
目があっちこっち泳いで、見てるこっちが恥ずかしくなるくらいだ。
「主ちゃん気にしないで。一松は無視している訳では無くて、緊張してるだけだから」
「ふふっ、そうなんだ。はい、一松くんにお土産」
「っ!!」
一松の目が珍しく見開いている。
うん、本当に珍しい。
誰だこれ?こんなに目を見開いているのは一松じゃない。こんな一松はいやだ。
だけど無理もない。
主ちゃんは何故か、一松だけに猫の顔の形をした最中を一つ渡した。
「え…主ちゃん、なんでこいつにだけ別の最中を買ってるの?」
聞いてないよ。
そんなの、流石の僕だって妬いちゃうんだけど。
「え?だって、猫好きって聞いていたから。一つしか買ってないけど、どうぞ!」
嫌な予感しかしない。
一松は、震える手で最中を受け取ったと思ったら…案の定、
「一松ーーっ!!何嬉しさのあまりウンコしようとしてんのーー!!??」
「グフッ!?」
ジャージを下ろし、ウンチングスタイルになったので、渾身のドロップキックをお見舞いした。
主ちゃんのオシッコは神聖な供物に匹敵する代物だけど、こいつのウンコとかウンコでしかないから。
誰も見たくないから。
悲劇しか生まれないから。
(ダメだ!こいつらに会わせるとロクな事がない)
「主ちゃん…スタバァに行ってお茶でもしようか?って、主ちゃん!?」
主ちゃんはショックのあまり、固まって動かなくなっていた。
(やっぱり…無職だけど兄弟で一番マトモなのは僕だな)
気絶している一松は無視し、気を失った主ちゃんをソファーにそっと寝かせると、僕は求人誌を読み始めた。
(うーん、明日から頑張ろうと思っていたけれど、一番マトモだし、もう少し自分の時間を大切にした方がいいよね)
読みかけの求人誌を閉じ、最中にかぶりつく、残念な三男なのであった。