第42章 番外編 F6 おそ松とお嬢様
主人公視点
「イヤですっ!!結婚なんてしたくないっ!」
わたしが自室に籠ってから三日が経とうとしている。
唯一部屋から出るのはトイレのみ。
食欲も落ち、部屋に運ばれてくる食事はほとんど口をつけていない。
わたしの、精一杯の抵抗だった。
世話係であるトト子は、困ったように眉根を寄せている。
トト子は、黒いメイド服に、髪を二つに結って頭にはカチューシャをしており、わたしと同い年だ。
わたしがヒステリーを起こし投げたペンがカチューシャにぶつかると、舌打ちしながら髪型を整えた。
「ですが、旦那様が主様の為に選ばれたお方なんですよ?ハタ坊様は、フラッグコーポレーションの代表取締役でありながら、とてもお優しく誠実なお方だと見聞きしております」
「だって!頭にハタが刺さっているんですよ!?ロボトミー手術じゃあるまいし!!わたしもアレを刺すだなんて…絶対イヤ!!」
「うーん、どちらかというと、首長族とか、唇に皿をはめるムルシ族に近いんじゃないですかねー?」
「トト子、敬語が雑になっているけれど」
「申し訳ございませーん」
申し訳なくなさそうに謝るトト子。
少し態度が気にくわないけれど、窮屈な屋敷での暮らしは、彼女のおかげで幾分か和らいでいた。
トト子とは主従関係にあるものの、わたしにとっては唯一の信頼出来る友達だ。
時々二人きりになると、皆には内緒でブラックジョークや悪口を言い合い、ストレス発散をしたりしている。
可愛らしい顔つきをしているのに、その内面は結構、いや、かなり腹黒い。