第35章 番外編 F6 チョロ松と専属メイドの秘め事(長編)
まずは、デスク、ソファー、本棚、パソコン周りに窓と床をピカピカに磨き上げた。
カーテンも新しいものに変え、来客用の応接セットの机には小さな花瓶を。花瓶には、今朝摘んだお庭の赤い薔薇を生ける。
そして——密かに作っていた、四つ葉のクローバーを押し花にしたしおりを、目に入るようそっと花瓶の横に置いた。
一度読んだ文章は二度と忘れないそうだが、使ってくれるだろうか。
(花言葉は…真実の愛と、私を想って——か)
嬉しいような、照れくさいような、それでいて切ない気持ちで一杯になる。
お庭を歩いていて、偶然見つけた四つ葉のクローバーの花言葉は、皮肉なくらいわたしの想いをストレートに表現していた。
神様。
叶わぬ恋でも、思うだけならば、共に時を過ごすだけならば、どうかお許しください。
(あとは、この読み終わった本を書庫に戻しておいてあげようかな)
普段、危ないから重たいものは持つなと言われているけれど、幸いチョロ松様はお留守だ。
(わたしだって、これくらいの量ならきっと運べる!)
図鑑三冊、学術書二冊を両手で持ち、わたしは廊下へ出た。