第5章 四男と雨だれ
結局、10分粘った後、ようやく一松くんの重い腰が上がった。
自分の持っている中では大きいサイズのTシャツとジャージを貸したけれど…
(やっぱり小さいよね…)
シャワーを浴び終わり、頭にタオルをかぶってDr.ペッパーを飲んでいるその人には、少し窮屈そうだった。
洗濯機を回し終え、隣にさりげなく座る。
「一松くんっ」
「…なに?」
「不幸なんかじゃないよ?雨降ってラッキーだった!」
「……は?」
さっきスルーした話題を、ワザとむし返す。
「だって、冷やしたドクぺをご馳走出来たもん。一松くんが好きって言ってたから、いつ来てもいいように買っておいたんだ」
そう伝えただけなのに、分かりやすいくらい顔が赤くなっている。
「美味しい?」
「……」
また口ごもっちゃった。
そんな一松くんに少しだけ意地悪をしてみる。
「え?美味しくないの?じゃあわたしが全部貰っちゃおうかな?」
「…ダメ」
「美味しいよね?」
「………う、うん」
またさらに赤くなっちゃった。
・・・
一松くんと過ごして早3ヶ月。道のりは長かった。
手を繋いだのは2ヶ月過ぎた後、初めてのキスは前回のデートの帰り道。
最近の中学生、いや、下手したら小学生に笑われるようなレベルのスローペース交際だ。
(今夜、その先まで進めるかな?)
わたしは、雨が止まないことを願った。