第29章 アンケート投票第2位 注文の多い猫松 前編
主人公視点
一松くんから思いがけない知らせを受けた。
何でも、猫カフェの面接に行ったら採用されたらしい。
受かったことは本当に嬉しい!
心から祝福したい!
でも、それよりも、閉鎖的な一松くんが自ら積極的に働こうとした。
わたしは、それが何よりも嬉しかった。
(えっと…ここかな?)
「猫カフェ」と書かれた看板があるビルを発見し足を止める。
どうやら二階がお店らしい。
一松くんの「べつに来なくてもいいけど」は、来てくれたら嬉しいという意味だと脳内変換されたので、早速様子を見に訪れたのだった。
・・・
(ちょっと緊張するなぁ)
ドキドキしながら猫カフェの扉を開けた。
カランコロンと懐かしい、ドアの音と共に現れたのは、
「……いらっしゃいませ」
頬を染めたエプロン姿の一松店員。
「えっと、初めてなんで料金システムとかよく分からないんですけど…」
仕事の邪魔をしないよう、他人のふりをする。
「…では、こちらへどうぞ」
すごい!すごいよ一松くん!
声は小さいけれどがんばっている!
きちんと敬語を使っている!
過保護すぎるかもしれないが、ひたむきにがんばる彼の姿に、嬉しくてたまらなくなってしまう。