第23章 ぶどうって… 一松
チョロ松視点
一松がぶどうを一房持って帰ってきた。
知り合いに貰ったから、みんなで食べようだって。
っつーかコイツ、猫以外に知り合いなんていないだろ?
いるとすれば…
この間並んで歩いていたあの女子かっ!?
あの、猫の名前と偽ってちゃっかり仲良くなっていた主さんなのかーーっ!!??
(聞きたいでも聞けない!聞いたら何されるか分かんない!脱童貞前に、僕はまだ死ぬわけにはいかないんだ!)
僕以外のみんなも、絶対に気になっているはずだ。だけど、誰もその話題には触れず黙々とぶどうを食べている。
「一松…葡萄の花言葉を知ってるか?」
「……」
(カラ松兄さん、いつも通りシカトされてるけど、一体どうやって話を展開させる気だ!?)
フッとお決まりな笑みを浮かべ、空気を読まずにつらつらと語り出した。
「葡萄の花言葉…それは…陶酔、好意、信頼、思いやり…そして——快楽っ!!」
「……」
静まり返る松野家の居間。
(うん、普段通りだな。そして、ぶどう美味いなぁ……って!?)
「一松っ!おいっ、一松!」
「…なに?」
「鼻血…出てるけど?」
静寂から一変、ドッと笑いが起きる。
「やだなぁ一松兄さん!花言葉で興奮しちゃうとか、かわいすぎーーっ!!」
「あっははー!!はいティッシューー!!」
「ウブだねぇ!かわいい弟よ!」
「一松、勉強になっただろう?」
「クソ松…殺す!!」
「え!?ちょ、待って!!なんで!?ああぁぁぁぁぁあーー!!」
一松が鼻血を出した事以外は、全くもっていつも通りな松野家だった…。